すばらしき本
この本、すばらしかったです。
現場が動き出す会計 ―人はなぜ測定されると行動を変えるのか(amazon)
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管理会計に興味がある方はぜひ読んでみてください。とてもおすすめです。
ネタバレにならない程度に感想を。
この本は管理会計の本ですが、一般的に管理会計の本というと、〇〇比率の説明などが多い印象をもちますが、この本はちょっと視点が違います。
情報システムと影響システム
何らかの指標を測定して、その結果に応じて経営者は次の一手を打つ。この情報を提供する役割を果たすのが情報システムです。一般的に経営分析というとこの構図を指すのではないでしょうか。経営者でなくても、上司が部下の評価を行う上で必要な材料となる情報を提供するのも情報システムです。
この本で強調しているのは、指標の測定によって、現場側の行動が変わってしまうことです。しかも測定する側が意図しない行動です。
例えば、現場に利益目標を課しすぎると、キャッシュフローを犠牲にした行動に出てしまうことです。東芝の「チャレンジ」もこういう側面があったのかもしれないですね。
具体的には、たくさん製品を生産すれば、製品1つに対する固定費の配賦が少なくなって、利益が一時的に大きくできちゃいます。
このように、管理会計というのは、情報システムと影響システムという二面性があります。
管理会計は生きている
これは時期や企業によって、求められる管理会計は常に変わってくるということです。どんなに立派な管理会計の仕組みを構築したところで、管理会計は継続的に仕組みをメンテナンスしなければ効果は出ません。
例えば、予定原価を設定するには、過去の平均をとっただけではダメで、どれだけムダを許容するかを考えて、そのときの状況に最適なシステムにします。かんたんすぎのシステムだと成果が出ませんし、逆に厳しすぎても現場のモチベーションを下げるだけです。
結局管理会計の仕組みを作る上で大事なのは、現場想像力です。現場を測定することで、どんなメリットが生まれ、どんな歪んだ行動をする可能性があるか、を想像する力が求められます。その上で、管理会計の仕組みを常に最適な状態に保必要があります。
ですので、うまい管理会計の仕組みを作るには、絶えず仕組みのチェックを行う人材や、データをシステムにため込むように運用の整備やシステムの柔軟性など、実現するためにいろいろとハードルがありますね。ただデータが集まったから分析しよう、ではダメなわけです。
利益とは?売上原価とは?
利益といってまず思い浮かべるのは、おなじみの売上総利益、営業利益、経常利益、純利益ですね。その他にもEBITDAや付加価値を使用するのも有効。ちなみに、有名な京セラのアメーバ経営で重視されている指標は「時間あたり付加価値」のようです。
管理会計では、どの利益指標を使用するかは決まっていないです。その企業が「何をみたいか?」によって適切な指標が変わります。
売上原価についても、財務会計上は広告宣伝費や研究開発費も、売上原価に含めるのもよい。
事例紹介:アメーバ経営
詳しい解説はこの本の中でかなり詳しく説明されているので、ご覧ください。以前から私もアメーバ経営の概要は知っていましたが、影響システムの観点からみると、実にうまいことできたシステムだなぁと関心してしまいました。
メリット:
①指標がわかりやすくて、現場の行動が変わりやすい
※時間あたり付加価値ですね。
②コントロール可能なものだけが指標となる
※労務費は対象外。
③横並び比較で競争と連帯を促す
※時間あたりというのがポイント。
デメリット:
①手間、運用コスト
②アメーバ間の価格はリーダー同士の相談ですが、適した人材がいない
※でも組織が人を成長させる側面もあるので、やってみるのもあり
③組織全体がバラバラになる可能性あり
※経営理念の浸透、普段のコミュニケーションとる、などがあればオッケー。あと金銭的報酬に連動させすぎないほうがよい。京セラでは定期的に飲み会(?)のような場を設けているらしいです。
その他論点
・事業部制での、振替価格(事業部同士)はどう決めるか難しい。
・予算管理で、環境(景気など)の変化分をどうとらえるかが難しい。
・ついつい資産増加してしまうのはなぜ?
→資産は効率化を助けてくれるだろうという意識。もう増えてしまうと、現場は「使わないともったいない」と思って、本来時間をかけてほしいものに時間をさけないなど、影響があります。
※逆に資産が少なすぎてもダメ。ROIを上げようとして、投資を過剰に減らしてしまうと少なくなります。昔のSONYはこれだったようです。
・投資採算計算
NPV、IRR、回収期間法、継続価値、投資利益率法などなど、言葉の説明だけではなく、長期・短期でみたときのそれぞれの方法の違いもあります。
・研究開発はきっちり仕組みを作り、ゆるく運用がよい。
まとめ
ということで、こちらおすすめです。
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