目次
本質の理解
突然ですが、みなさんは旧定額・定率法の「残存価額」、「償却可能限度額」について、説明できますでしょうか?
固定資産の知識がある程度お持ちの方でしたら、
「残存価額は取得価額の10%のやつ、償却可能限度額は5%のでしょ?」
と、ぱっと出てくるかと思います。
しかし、「語れる!」っていう人はあまり多くはないのではないでしょうか?
知識を一時的にちょろって覚えても、どうせ忘れてしまうので、「なぜこんな制度になっているんだろう?」と整理してみようと思います。
変遷を辿る
レッツタイムトラベル
本質に迫る!という大それたタイトルにしてしまいましたので、まずはこれまでの変遷を辿ってみようと思います。
大きく分けて3つの時代。過去からの経緯を知ることで、残存価額と償却可能限度額もバッチリ理解できます。
具体例として、100万円の固定資産を10年で定額法により償却するとして話を進めます。
①昔~昭和39年
この頃は、耐用年数経過時点で、残存価額まで簿価が減り、そこでストップする方式でした。いまでは考えられませんね。
♪そんな~時代も~あぁ~ったねと~
たぶん、固定資産を使い終わっても、売ったら取得価額の10%くらい残っているでしょう、っていう前提ですかね。
②昭和39年税制改正~平成19年
昭和39年改正もなかなか大きかったみたいですが、主に2つ改正があったようです。
- 耐用年数を平均15%短く!
- 残存価額ではなく、償却可能限度額まで償却OK!
償却可能限度額まで償却していいってことは、こうなります。
企業の内部留保を増やすために、損金にできる額を増やし、結果的に法人税減税にしたみたいですね。
③平成19年~今(平成19年以前取得)
備忘価額まで償却OKとなりました。
償却できるというのは損金が増えて税金が減るので、企業にとってはうれしいことなのですが、複雑な仕組みになってしまったので、心境も複雑ですね。
④平成19年~今(平成19年以降取得)
一気にシンプルになります。国税の方々が「えぇい!こうしてしまえ~!」と言っているのが聞こえてきそうですね。
いままでのは一体なんだったのだろう。
残存価額、償却可能限度額、という概念自体をなくしてきました。いい思い切りです。
変遷まとめ
一覧にすると、こうです。
改めて「残存価額」と「償却可能限度額」とは?
本質的な理解
当初の話題に戻すと、旧定額・定率法の「残存価額」「償却可能限度額」の本質って何だろう?って話です。
歴史を振り返りまして、だいたい見えたと思いますが、最後にまとめます。
残存価額
耐用年数経過時点で達する簿価、と認識するとよいです。
取得価額の10%と覚えても役に立たないので、本質的な理解が大事だと思います。
旧定額法の償却費の計算にも影響します。(取得価額-残存価額)×償却率で求めているので。
ちなみに、上の例はすべて定額法で書きましたが、定率法でも同じです。
10年経ったら、取得価額の10%まで簿価が落ちるような償却率が算出され、それが償却率表となっています。
補足ですが、定率法で注意すべきは、旧定率法の資産を減損をしたときに、残存価額ゼロになってしまう場合です。
上の通り、残存価額というのは耐用年数経過時点で残っている簿価なので、残存価額がゼロとしてしまうと、理論上償却率が計算不可となります。(定率法は、計算ルールとして簿価に償却率をかけるので、一生ゼロになることはあり得ません・・・)
ですので、そのときの処置として、例外的に10/9をかけることが認められています。
詳しくはこっちで書きました。けっこうややこしい、でもおもしろい話です。ちょっとマニアックですが・・・。
償却可能限度額
昔はここまで償却ができた、でもいまは備忘価額まで償却できるので、5年均等償却のためのストップポイント!!
という認識で、だいじょうぶかと思います。そもそも償却可能限度額まで償却OKにするときに、代わりの備忘価額まで償却OKにもししていれば、こんな項目要らなかったのになぁ。
まぁ金額のインパクトとかもろもろ考えてできなかったんだろうけど。
いまは備忘価額まで償却できるので、「償却可能限度額」って言葉はスーパーややこしいです。何も知らない人が普通に読んだら、「ここまで償却できるんだね」ってなってしまうと思うので。
最後に
これから取得分はシンプルな計算となり、残存価額とか償却可能限度額、5年均等償却なんか関係ないので、使わなくなる知識ではありますが、知っておくとおもしろいですね。
私自身、いい情報整理となりました。
【関連記事】
会計系の記事はこちらから。
旧定率法の残存価額ゼロという、マニアックな記事はこちらから。
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